政策

PDFのダウンロードはこちら

1
夢をもって「未来チャート」を
描ける社会を目指して

1 国民・市民が夢と未来を描けるように

(1) 個人の尊厳、憲法の価値を護る

社会的弱者の人権保障の拡充

 弁護士は、少数者の人権保障の「最後の砦」であるべき司法の一翼を担う者として、社会的弱者といわれる人々の人権保障に取り組んできました。とりわけ平成の司法制度改革が、「法の支配を社会の隅々に」というキャッチフレーズの下に弁護士の活動領域の拡大を求めたことを受けて、それまで「法の光」が当たっていなかった社会的弱者が抱える法的課題に向き合い、困難に寄り添い、一人一人が個人として尊重される社会づくりを目指して、力を尽くしてきました。
 その分野は、子ども、女性、性的少数者、高齢者、障がい者、外国人、消費者、犯罪被害者、えん罪被害者、犯罪加害者家族、被災者など、多岐にわたります。
 これら社会的弱者の権利を実現するための弁護士の活動は、民事法律扶助制度の対象にならない活動が多いことから、日弁連は少しでも会員の活動に報いるために、法テラスに委託して法律援助事業を運用しています。しかし、日弁連会員の特別会費から賄う互助的な援助事業では、報酬額に限界があるうえ、活動を担う会員のすべてのニーズに応えることはできませんし、そもそも国の制度のあるべき姿とはいえません。そこで、社会的に弱い立場にいる方々が国費で弁護士に依頼することができる制度の実現を求めていく必要があります。
 また、個々の事案における活動を通じて私たち弁護士が認識するに至った、様々な現行法制度の不備について、日弁連として「法律制度の改善」(弁護士法1条2項)のために、立法提言等を行う必要もあります。日弁連として長年取り組んできた問題もあれば、次々と浮かび上がる新しい課題もありますが、いずれも力強く前に進めていくことが必要であり、法改正等の実現を目指して、国会や政府への粘り強い働きかけも必要です。

格差是正等の貧困と人権をめぐる諸課題への対応

 日本社会における様々な格差拡大が指摘されて久しい中、生活保護制度は、憲法25条の生存権の保障を具現化したものであるにもかかわらず、現実の運用はそのとおり行われていません。2019年2月14日に日弁連が公表した生活保護法改正要綱案(改訂版)に基づき「生活保護法」から「生活保障法」への改正の実現を求めていく必要があります。生活保護制度の改善と並行して、我が国に暮らす全ての人が社会保障を受けることができるように、社会保障制度の見直しも求めていくべきです。
 また、ワーキングプア解消のため、最低賃金の引き上げ、さらには、地域によって金額に差がある現行最低賃金制度を改め、最高額に合わせた全国一律最低賃金制度を実現すること、また、経済的に追い詰められた人が死へと追い込まれることがないよう、充実した経済支援策などの実現を求めていく必要があります。

人権擁護とビジネスの共生、SDGsの推進

 ビジネスと人権が共生する社会、すなわち、一人一人の人間が現実の社会活動、企業活動、国家活動と連動しながら、その人権が尊重され保障される世の中の実現を目指します。
 国連では、1948年に世界人権宣言、1966年に国際人権規約、2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」(「指導原則」)が承認され、さらに2015年には「誰一人取り残さない」ことを宣言し17の目標からなるSDGs(持続可能な開発目標)が採択されています。指導原則とSDGsの考え方は人類の叡智の賜物です。人権も国家も最終的に個人の尊厳に行き着くと考えられるところ、国家をも凌ぐパワーを有する大企業のみならず、中小企業にとっても、個々の企業が人権を尊重する具体的施策を実行することこそが企業自身にも大きなメリットをもたらすという社会を実現するために、弁護士がその中核的役割を担う施策に取り組みます。

立憲主義、民主主義、基本的人権等を脅かす諸課題への対応

 立憲主義、民主主義、基本的人権の尊重、そして恒久平和主義などの憲法が定める基本原理は、決して侵してはならない法の究極的価値として堅持すべきですが、ナショナリズムやポピュリズムの高まり、ウクライナやガザ地区など世界各地で生じている紛争による不安・危機感の高まりにより、近時、このような基本原理を脅かしかねない事態となっています。
 2015年には集団的自衛権の行使を可能とした安保法制が立法化されました。その後も、大規模災害への対処の名のもとに人権制約を可能にする緊急事態条項を創設すべきとの議論もあります。日弁連は、立憲主義等に反することを理由に一貫してこのような動きに対し反対の立場を採ってきましたが、引き続き、憲法が定める基本原理の実現に向けて積極的に活動を進める必要があります。

SNS等を通じた新たな人権侵害、犯罪被害等への対応

 デジタル技術の発展や生成AIの急速な進歩等により、情報へのアクセスや整理が容易になる一方、SNS等を通じた特殊詐欺・闇バイト等の犯罪行為、誹謗中傷による名誉毀損や著作権侵害など、新たな人権侵害が市民を脅かし、その対応に迫られる事態が生じています。私たちは、科学技術の進化が人権を侵害しないよう法的な観点から注視し紛争解決に努めるほか、賠償責任充実化等の救済策についての検討を含め積極的に取り組んでいきます。
 また、犯罪被害を受けた方々が、一日も早く社会の中で再び平穏な生活を営むことができるよう弁護士が包括的に支援するとともに、これに対する必要な経済的援助を行うことを内容とする犯罪被害者等支援弁護士制度の導入についても、進行中の犯罪被害者支援弁護士協議会での議論を踏まえ、実現に取り組んでいきます。

(2) あらゆる地域・分野における法的サービス、司法アクセスを充実させる

司法過疎、弁護士偏在への対応

 日弁連は、三次にわたる行動計画を策定し、司法過疎・弁護士偏在問題に取り組んできました。その結果、2025年3月1日現在、ゼロ地域は解消し、ワン地域も2か所となっています。もっとも、女性弁護士がゼロの地域は依然として支部単位で全国に約60か所あり、私たちは女性弁護士に負担がかからないよう留意しつつ、女性弁護士の偏在対策に引き続き取り組みます。
 他方、最近では、大都市圏等に新規登録者が集中し、小規模の単位会で新規登録者がゼロまたは1名という問題も生じています(新ゼロ・ワン問題)。ひまわり基金法律事務所への赴任希望者や、法テラスのスタッフ弁護士志望者も減少しており、このままでは、再びゼロ・ワン地域が増加し市民の司法アクセスが阻害される可能性も否定できません。
 私たちは、司法過疎地に赴く弁護士の育成、地域と新人弁護士のマッチング、司法過疎地での開業に対する経済的な支援等、司法過疎、弁護士偏在の解消に全力で取り組みます。

裁判所の司法インフラの整備

 市民の司法アクセスを向上させるためには、裁判所の司法インフラの整備も欠かせません。各地の裁判所支部についても、地域の実情に応じた大規模支部の本庁化、多様化する紛争への対応、裁判官の常駐化、填補回数の増加、裁判所内の通信環境の整備など、デジタル化を踏まえつつ、新たな司法インフラの見直しが求められています。
 特に、成年後見事件や相続事件の増加、離婚における子をめぐる紛争の複雑化により家庭裁判所の役割が重要性を増しています。しかしながら、家庭裁判所は、裁判官、家庭裁判所調査官等の配置が不十分であり、事件数に見合った調停室の確保もできていません。家庭裁判所における司法手続が実質的に保障されるよう、家庭裁判所の人的・物的基盤の拡充に向けて働きかける必要があります。

裁判手続を始めとする司法のデジタル化

 裁判手続のデジタル化が進み、2026年には、訴状等のオンライン提出やシステム送達も可能となり、訴訟記録は原則電子化されることが見込まれています。民事訴訟手続のみならず、家事手続、倒産手続、強制執行手続等のデジタル化の実用化も進められています。新しいシステムが市民や弁護士にとって利用しやすいものとなり、利用する者への手続保障が十分に図られるよう、私たちは実務を踏まえた意見を述べていく必要があります。
 一方、刑事手続のデジタル化は、検討の過程で日弁連が述べてきた意見が必ずしも採用されず、残念ながら、被疑者・被告人の権利保障の拡充や弁護人の利便性の観点よりも、捜査機関や裁判所の便宜という観点が前面に出された制度になりました。被疑者・被告人の防御権保障のためには弁護人の利便性改善も重要であり、引き続き改善を求めていきます。

民事法律扶助の利便性向上、弁護士費用保険制度の拡充

 民事法律扶助は、資力に乏しい市民にとって、司法アクセスを保障するための重要な制度です。現行の代理援助、書類作成援助は、弁護士等の費用を立て替えるにとどまり、原則として償還を求めるものですが、司法アクセス改善の観点からは、償還免除の範囲の拡大や、さらには給付制の導入を目指していくべきです。また、煩雑といわれる申し込み手続の合理化など、利便性の向上を求めていく必要もあります。一方、現在は日弁連が費用を負担して法律援助事業として行っている、子ども、在留資格のない外国人、高齢者・障がい者への支援等について、民事法律扶助の対象となるよう、その範囲の拡大を求めていく必要があります。
 また、民事法律扶助の資力要件を満たさない中間層については、司法アクセス改善のために弁護士費用保険制度の拡充が必要です。すでに日弁連と協定を結ぶ保険会社等は20社に及んでいますが、私たちは、さらなる協定先の拡大、自動車保険以外の保険商品における弁護士費用保険の開発促進、適正な弁護士報酬の確保など、弁護士費用保険制度が広く市民に定着するよう、その拡充に努めます。

災害への対応、被災地に寄り添う活動への支援

 日本では近年、特に災害が多く、阪神淡路大震災や東日本大震災以降も多くの地震や豪雨等の災害が頻発しています。特に2024年1月1日の能登半島地震と、追い打ちをかけて同年9月に同地域で発生した記録的な豪雨の被害は記憶に新しいところです。
 多発する災害をうけて自発的に形成された全国的な弁護士のネットワークが被災地における多種多様な法的支援のニーズに対応して活発な活動をしており、私たちはこれら弁護士による災害ケースマネジメントの活動を積極的に支援していきます。そのために、平時からの研修等による研鑽を通じて弁護士の災害対応力の強化、さらには被害の予防、避災への対応にも取り組みます。また発災時に備えて各地の単位会と協力して被災者支援にあたる体制をより強化するとともに、全国の自治体と弁護士会との間での災害復興支援に関する協定の締結等を進め、行政との連携を図っていきます。

(3) 司法制度改革、改善等に引き続き取り組む

民事司法制度改革

 民事訴訟手続のデジタル化の普及を踏まえ、今後は利用しやすく頼りがいのある民事司法制度を実現するために、より実質的な改革に向けた取組みが重要となります。とりわけ、司法アクセスの拡充(デジタル化に伴う本人サポート、提訴手数料の見直し)、慰謝料額算定の適正化や違法収益移転のための法改正、情報・証拠収集制度の拡充のための民事訴訟法の改正(当事者照会制度の実効化、文書提出命令制度の拡充、情報・証拠の早期開示命令制度の新設、秘密保持命令制度の拡充、依頼者・弁護士間の通信秘密保護制度等)が重要です。

刑事司法制度改革

 平成の司法制度改革及びその改革を生かそうとする全国の弁護士の努力によって、刑事司法制度は大きく変化し、被疑者・被告人の権利保障は拡充しました。とはいえ、いまだに積み残された課題や改革後の運用によって見えてきた課題もあり、さらなる改革を求めていく必要があります。
 例えば、人質司法の打破、取調べの全面的な可視化、弁護人立会権・オンライン接見の実現、逮捕段階の国選弁護人制度・全面的国選付添人制度の実現、裁判員制度の改善など、日弁連を挙げて取り組むべき課題はたくさんあります。
 また、全国の弁護士の献身的な活動に頼っている国選弁護制度・国選付添人制度ですが、もともと低廉な国選弁護報酬は、日弁連からの長年の要求にもかかわらず増額されることがない中で、物価の高騰を考えると実質的に減額している状況です。加えて、私的鑑定費用などの実費が国費で賄われないために弁護人の立証活動に困難をきたしている問題など、国選弁護報酬のあり方の改善は急務といえます。

(4) 重要な法制度の改正に関する喫緊の課題に迅速に対応する

早急な再審法整備の実現

 日弁連は、これまで再審事件を支援するとともに、再審法改正実現本部を設置し、再審法整備に向けて取り組んできました。袴田事件が記憶に新しい今、私たちは、引き続き、えん罪被害者を早期に救済するため、①再審審理に関する手続規定の整備、②再審請求手続における証拠開示制度の整備、③再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止、及び④再審理由の拡大、を含む再審法整備を早急に実現すべく、活動していかなければなりません。

死刑制度廃止に向けた丁寧な対話

 日弁連は2016年開催の福井人権大会において死刑を廃止すべきと宣言し、死刑廃止に向けた活動を継続しています。2024年には、日弁連が呼びかけて、元警察庁長官や元検事総長をも含む国民各界各層から成る「日本の死刑制度について考える懇話会」が設立され、同懇話会は全員一致で、「(現行の死刑制度を)現状のままに存続させてはならない」として公的検討組織の設置を提言しました。私たちは、この提言を生かしつつ、死刑存置派とも丁寧な対話を重ねながら、日弁連の活動をさらに進捗させます。

選択的夫婦別姓制度の実現を含む多様性を尊重する法制の実現

 選択的夫婦別姓制度は、日弁連がかねてより導入を提言し、1996年の法制審議会でも子の不利益を検討するとしつつも導入を答申されていたものです。最高裁判所も国会の議論を要求し、世論調査でも導入への賛成意見が反対意見を上回っています。日弁連ではワーキンググループを設置して導入に向けた活動を進めており、引き続き、積極的に活動していく必要があります。
 そのほか、多様な家族の在り方や、性的指向・性自認、多文化・価値観の違いを認め合う寛容な社会の実現に向けた法制の検討をしていきます。

2 弁護士が十全にその役割を果たすために

弁護士の活動領域の拡充

 弁護士の活動領域の拡充は、公正・公平な社会の実現に必要であるとともに、弁護士の業務基盤の確立にも寄与します。そのため、あらゆる規模の企業支援、行政との連携、国内外における国際業務の推進、立法分野への関与等、これまでの日弁連の活動の成果を継承しつつ、さらに充実、発展させていきます。私たちは、各地域、各分野の実情や、国、公的団体、経済団体等各種団体のニーズに学び、連携を考えながら、未開拓の分野への挑戦を積極的に支援いたします。

弁護士業務妨害の根絶

 弁護士業務に対する卑劣な妨害は、ごく一般的事案において多発しており、弁護士であれば誰にでも起こりうるものです。弁護士が職務を全うし、市民の人権を守るために、私たちは、妨害に苦しむ被害弁護士を支援し、かつ、不当な妨害を根絶するべく全国単位会の弁護士業務妨害対策委員会に積極的に働きかけ、弁護士が十全に役割を果たせる環境を整えます。

弁護士業務をめぐる先端技術への対応

 生成AIを始めとする技術革新はめまぐるしく進化しており、個人・企業を問わず、日常的に活用されています。私たちは、AIが得意なこと、逆に、弁護士(人間)にしかできないことを明確にし、弁護士が提供できる価値を改めて社会に提案します。
 また、法曹実務における生成AIの活用としては、契約書レビューなどの他、ODRなど様々な場面での利用が考えられるところですが、活用にあたっては、個人情報・企業秘密の漏洩、著作権侵害等、法的リスクに注意する必要があり、また、弁護士法72条違反の可能性も指摘されるところです。私たちは、効果的にAIを活用できる方法を調査・検討するとともに、弁護士会による問題提起と適切な監督が必要と考えます。

2
弁護士、弁護士会の夢ある
「未来チャート」を描くために

1 弁護士自治、弁護士法の理念を護り、弁護士会運営の活性化を図る

弁護士による不祥事、非弁、業際問題への対応

 近時、弁護士による詐欺二次被害、預り金横領等の不祥事事件が多く発生していますが、これらは市民の弁護士への信頼を裏切る行為であり、弁護士自治の根幹を揺るがしかねない重大な問題といえます。この問題に対応するため、業務広告や預り金に関する規程等についての見直しや適切な運用がなされるよう取り組んでまいります。
 また、弁護士の不祥事の裏では弁護士を利用する非弁提携業者の存在があります。非弁提携業者に対する監視を行うとともに、会員がこれに利用されないよう各種対応策の周知徹底などに取り組む必要があります。
 隣接業種に対しては、その領域問題について適切に意見を述べ、互いの領域を明確にしていく必要があります。そのうえで、隣接業種の権限逸脱行為等については、厳しく追及していきます。

弁護士会におけるDEIの推進

 日弁連は「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」を行い、弁護士会の内外において、全ての人の人権が尊重される公平、公正な社会、一人一人がありのままで受け容れられ活躍することのできる社会の実現に向けて貢献することを目指しています。また、日弁連では、副会長及び理事のクオータ制を導入し、政策決定過程での女性の参加拡大を目指すなど、継続的な取組みを行っています。
 私たちは今後、ジェンダーギャップの解消にとどまることなく、LGBTQ、障がい者、民族・外国籍・宗教、育児・介護等を含めた家族関係等の属性にも配慮し、より積極的にDEIの推進に取り組んでいきます。

弁護士会業務のIT化、OA構築を巡る情報提供等支援

 日弁連では、弁護士会の事務効率化の観点から、登録事項変更等の申請事務についてオンライン手続を可能とするシステム開発を進め、手数料無償化と合わせて会則等の改正を行いました。このオンライン化・無償化の対象は限定されていますが、その運用状況等も踏まえ、さらにその範囲を広げていくことが必要です。そして弁護士会や会員のニーズを検証し、弁護士会業務のIT化、OA構築に関する支援や、事務効率化のための制度面・運用面の改善を実施していきます。

2 弁護士の基盤と協働を強化する

若手弁護士の独立、業務開拓等支援の充実

 若手弁護士の独立開業や業務開拓のためには、まずは基礎的な実務対応力を養うことが必要であり、そのための研修を一層充実させるべきです。さらに、各業界のニーズや実例調査などを踏まえ、若手弁護士が活躍できる新しい活動領域の情報共有、開拓などの支援に取り組む必要があります。日弁連は若手弁護士サポートセンターを組織して開業・業務支援等に取り組むとともに、若手弁護士チャレンジ基金による公益活動、研修、先進的取組み等に対する支援を実施しており、今後も活動を継続・充実させていきます。また、新規登録弁護士を含む独立前の若手弁護士の就業先事務所での就業環境を注視し、悩みを抱える若手弁護士をサポートしていきます。
 そして、新65期から70期のいわゆる「貸与制世代」の若手弁護士に対しては、日弁連が2018年に貸与金返還に備えた貸付制度を創設し、2019年には一定額の給付金支給を行うなどの対策を行いつつ、貸与制世代の不公平是正のための立法措置を求める運動を行ってきました。私たちは、これらの活動を承継し、引き続き貸与制世代の経済的支援、不公平是正に向けた取組みを行っていきます。

組織内弁護士、大規模事務所との連携

 組織内弁護士の全弁護士人口に占める割合は7.4%に至っており(2024年6月末時点)、大規模事務所に勤務する弁護士も年々増加しています。弁護士、弁護士会が「夢」と「未来」を描くためには、弁護士が協働すること、弁護士会運営の活性化をはかることが必要です。そのため、日弁連として、組織内弁護士や大規模事務所の弁護士が直面する課題、問題意識を聴き取り、これを弁護士会の活動、運営に反映させるとともに、弁護士会活動への積極的な参加を呼びかけ、参加に必要な支援を行うなど、組織内弁護士や大規模事務所の弁護士との連携を強化していく必要があります。

民事法律扶助制度立替基準等の改善

 民事法律扶助制度の弁護士報酬基準は、資力に乏しい被援助者にとって著しい負担になることを避けるという観点も踏まえて設定されているところ、特に家事事件における報酬基準は弁護士の業務量や労力に見合っておらず、このままでは担い手の確保や持続可能な制度として存続させることが困難になる恐れがあります。
 そのため、民事法律扶助制度の弁護士報酬基準の見直しは急務であり、国民の生活上のセーフティネットとしてのリーガルエイドの重要性を国民により深く理解してもらうよう努めるなど、日弁連全体として、実現に向けた取組みを着実に進める必要があります。

3 未来の弁護士とともに夢を描く

法曹養成制度のあるべき姿を検討する

 法学部に法曹コースが設置され、法科大学院在学中の司法試験受験が可能となるなどの近時の制度改革が進み、法科大学院入学者数や司法試験受験者数が下げ止まるなど、法曹志望者が回復傾向にあるといえます。
 私たちは、有為で多様な人材が法曹を目指し、社会のあらゆる分野で活躍するために、弁護士会として法曹志望者増加のための取組みを重ねるとともに、引き続き、法曹養成制度のあるべき姿について、議論、検討を続けていくことが必要と考えます。


設立趣旨・政策骨子デジタルデータ

PDFをダウンロード